旅行業登録の条件の中には財産要件があります。
登録する種類により条件も異なっており、対策が必要な場合もあります。
今回は旅行業登録することを前提に、増資手続きを実施した企業様の事例をお伝えしていきます。
第3種旅行業登録に向けての増資
ご紹介させていただく企業様は都内に本店を構える企業で、これから第3種の旅行業登録を目指したいとの相談をいただきました。
専任の旅行業務管理者も雇用しており、欠格要件にも該当しておりませんでした。
弊所が会社設立手続きの定款作成をさせていただておりましたので、定款、謄本にも旅行業法に基づく旅行業との文言記載も記載があります。
一方で登録をする上では財産要件のチェックも必要ですので貸借対象表を確認させていただいたところ基準資産額要件を満たしていないことがわかりました。
そこで対策をご案内させていただき、増資手続きを選択、実施することとなりました。
増資対応
設立2年目の企業様で、資本金は400万円の企業様、第1期は50万円ほどの赤字でした。
さらに旅行業協会への加入は検討しておらず、弁済業務保証金分担金の活用ではなく、営業保証金300万を供託する方向で進めたいとのご意向でした。
貸借対象表、損益計算書などの決算書類をもとに基準資産を計算させていただいたところ、残念ながら増資が必要な結果となりました。
500万円の増資手続きを実施
実際に必要な増資金額は320万程度でしたが、5年後の登録更新も加味して500万円の増資手続きを実施。
提携の司法書士事務所と一緒に手続きをさせていたくこととなりました。
増資手続きに必要な登録免許税は、増加する資本金の額×1000分の7(最低額は30000円)で今回は500万円の増資手続きなので35000円となります。
非公開会社の場合で第三者割当により募集株式を発行する形としたため、必要書類は変更登記申請書、株主議事録、株主リスト、募集株式の引き受けがあったことを証する書面、資本金額の計上に関する証明書、登録免許税となります。
(払込のあったことを証する書面サンプル)
増資手続きにより、資本金が900万円となります。
旅行業第3種登録にあたり、旅行業協会に加入せず営業保証金を供託する形としても基準資産額を満たすことができます。
(増資が完了した後の提出必要書類としては、増資が記載された登記簿謄本を提出する必要があります)
基準資産額を満たさない場合の対策について
基準資産額は、第1種は3000万円、第2種は700万円、第3種は300万円、地域限定は100万円以上あることが登録の要件です。(旅行業法第6条第1項8号並びに旅行業法執行規則第3条)
4つの基準資産額対策
1.増資
今回実施した対策です。
決算により算出した基準資産額の不足額を超える金額の増資を行います。
資本準備金は増額分には含めることはできませんのでご注意ください。
必要書類としては「増資が記載された登記簿謄本」が必要です。
2.債務免除
決算により算出した基準資産額を超える債務免除を受ける必要があり、「その事実を記載した公正証書」を用意する必要があります。
3.贈与
決算により算出した不足額を超える贈与を受ける必要があります。
贈与の場合は「事実を記載した公正証書及び入金の事実を証明する書類等」の提出が必要です。
4.不動産の評価替えによる基準資産の充足
「不動産鑑定士による不動産鑑定書」かまたは「固定資産評価証明書」の提出が必要です
上記パターンのうちのどれかの対策が必要です。
取引額に応じた営業保証金の額
営業保証金(弁済業務保証金分短金)の額は前事業年度における旅行者との取引額に応じて変動します。
新規に旅行業登録をする企業は旅行業に関わる事業の計画をもとに必要な基準資産額を計算します。
当然ですが取引額(取引見込み額)が多いほど営業保証金(弁済業務保証金分短金)の額も増える仕組みです。
参考ですが、弁済業務保証金分担金の額は営業保証金の5分の1の金額です。
旅行業登録のための増資まとめ
旅行業登録のための増資手続き例のご紹介でした。
財産要件の対策をせずに旅行業登録ができることがベストですが、目には見えないサービスである「旅行商品」を販売する権利の登録をするのが旅行業登録なので厳しい財産要件があるのも事実です。
計画と対策をとれば財産要件を満たすことは十分可能ですし、旅行業登録の種類においても第3種旅行業登録から2種、1種へとステップアップする企業も多くいらっしゃいます。
毎年コツコツ利益を生み出していき資産が増えていけば増資がなくても資産要件を満たすことも可能です。
計画をしっかり立てることで実現可能性が高まりますのでまずは旅行業登録までの計画を立てることをおススメ致します。